あなたが経営者ならば一度はこんな言葉を聞いたことはあるのではないでしょうか? 「会社はトップの器以上大きくならない」類は友を呼ぶで、自分と同じレベルの人間しか自分の周りには集まりません。
大きな会社にしたければ、まずはトップの器を大きくすることが何よりも大事です。言われていることは理解できると思いますが、具体的に器ってどうしたら大きくなるか知っていますか?
そもそも人間の器ってなんでしょうか? 一般的には、「人を許すことが出来る」「他人の意見を素直に聞く」「損得勘定がない」「何事にも動じない」このような人間が器が大きいと言われていますが、果たして本当でしょうか?
私は、器に関してそういった面も確かにあるとは思いますが、その一つの面をだけ見て人間の器を大きくしようと思っても中々大きくならないのでは? と思います。
実際にあなたが、「人を許すことが出来る」「他人の意見を素直に聞く」「損得勘定がない」「何事にも動じない」人間になるために、明日から俺はそうなる! と決めて次の日にそうなっていたら誤りますが、そんな結果になることはなかなか無いですよね?
その他にも、器を広げるために啓蒙書を読んだり、脳科学について深く学んでみたり、指導者から指導を受けたり、俗世を離れお坊さんになったりするかもしれません。そこで結果が出れば良いのですが、あの人最近器が広くなったね〜! といった話は日常的に耳に入ってきません。
確かにお坊さんには器が広い人が多い気がしますが、そこそこの人もいますよね? だからお坊さんになれば確実に器が広がるわけではないです。それは歴史も証明しています。
具体的にどうしたら器が大きくなるのでしょうか?
まずは一般的に言われている器の定義を見直してみましょう。多くは器の例え話としてコップなどが例にあげられ、この容器の大きさが人間としての許容量、中に入る水が外的要因を表していて、容器が大きければ外的要因が多くても、容量オーバーにならず水が溢れないと言われています。
だから器の大きい人間になるためにはこの理論で言うと、水がこぼれないようにコップを大きくしたり、広くしたり、深くしたりすることで、体積を大きくしないといけません。
ただ、ここで多くの方がつまずきます。器を大きくしないといけないのはわかったけど、いったいどうやって広くするんだ? お腹はビールを飲めば簡単にデカくなるけど……
一方、私の考える器は、容器として水がどれだけ入るか? ではなく“器=幅+度胸”と考えます。この幅というところがポイントです。
幅はコップみたいに浅い深いではなく、狭い広いで表します。ですので水が溢れないようにといった体積の概念は一度頭から削除しておいて下さい。
人間はオギャーッ! と生まれてから、行動をし他人から否定的なフィードバックを受けることで、その人のその後の人生において「〇〇をすると失敗するんだな?」「〇〇をしても無駄だ!」といった思い込みを作ってしまうことがあります。
鎖に繋がれた象の話が有名ですね。サーカスにいるゾウは小さい頃に鎖に繋がれます。ゾウは一生懸命鎖を引っ張って逃げようとしますが、鎖は切れず逃げきれません。そのうち観念して逃げることをやめてしまいます。
そして、年月が経ちゾウは大きくなり鎖を引っ張れば切れるようなパワーを身につけるのですが、今まで何度やっても鎖が切れなかったので、逃げるのは無理と思い込んでいるゾウは鎖を切って逃げようとしません。これが思い込みです。
そうなると次の行動を危惧し、同じような行動をしなくなります。そうした結果、不安という服を何重にも着て動きが制限され、行動パターンの選択肢が少なくなります。
パターンが少なくなると視野が狭くなり思考の範囲が限られます。その状態を幅が狭いといいます。この状態では人に影響力を及ぼすことは大変難しいです。
逆に幅が広い状態とは気付きを得て行動し、多くの経験を積んで人間として成長している状態を指します。そうすることで視野が広がり、周囲の人の人生を変えられるようになります。
ですので、今現在幅の狭い人も気付きを得ることにより不安要素をなくして行動し、経験を積むことで広げることが出来ます。
幅が広いだけでは器は大きいと言いません
幅の話ですが、極端な例を出すと悪の親玉でも幅の広い人はいますし、成人君主みたいな人もいます。言い換えるならダークサイドとホワイトサイド。この両方で幅を広げることが可能です。幅をどのように広くするかも、あなたの目標に応じて変わってきます。
目標を決めそれに対して気付きを得ながら行動することで幅の質は変わってきます。自分が目指したゴールが悪の親玉であればそんな感じで幅が広くなりますし、成人君主を目指すのであればその方向で幅が広くなります。
ですので、幅が広くなると影響力が大きくなり人の人生を変えることも出来るようになりますが、必ずしもそれが器が大きい状態とは言えません。器が大きい人と、ただ幅が広いだけの人の大きな違いは「欲」があるかないかです。先程 “器が大きい人=幅+度胸”と言いました。
本来、度胸とは損得勘定抜きに発揮されるものです。例えば私利私欲にまみれた人間が、自分の資産を増やすためにカジノで人がびっくりするような大金を掛けることは、度胸とはいいません。
欲があり損得勘定で行動する人は、たとえ幅が広くても器は小さいということです。あなたはどんな人間になりたいですか?
器を作るための度胸というスパイス
“器=幅+度胸”といいました。幅はここまで何となくわかったかと思いますが、度胸て何? と思われますよね? 辞書には物事に動じない心。肝っ玉とあります。
そうなんです!上述した幅が広がるだけでも凄いことなのですが、世間一般で考えられる器はこの幅に度胸を足したものだと私は思います。
様々な経験を積み、幅広く見れ、人生を変えれる気付きを与えられる人に度胸が備わると「人を許すことが出来る」「他人の意見を素直に聞く」「損得勘定がない」「何事にも動じない」人間になります。言い方は悪いですが、度胸だけだと、ただの馬鹿になります。
治療院で言えば、初めての患者さんから電話がかかってきた時点でロクに話も聞かず「絶対治りますから任せて下さい!」というようなものです。分かっている人から見ると、色んな意味でこの人、度胸あるな(馬鹿なのかな?)となります。
この度胸というのは器を構成する重要なスパイスなんですが、どこでこの度胸を発揮するかというのがポイントです。先程の電話の場面で発揮すると、ただ「度胸あるね(馬鹿ですね)」で終わりますが、これを人々から慕われるような場面で度胸を発揮すると「器が大きい素晴らしい人間ですね!」といわれます。
例えば、ある建設会社同士の話合いでのお話です。そこには器が大きいと言われて多くの方から尊敬され慕われている社長さんがいます。ある若者がここがチャンスとばかりに器の大きい社長さんに、自分の夢を語り出資を募ります、はたから見ればどう考えても失敗しそうな話。
しかし、器の大きい社長さんは、あなたの情熱が気に入ったと数億円をポンッと出します。こんな場面で度胸が出せると、ただの馬鹿ではなく、器が大きいと言われるのです。
どこでも度胸を出せば良いわけでなく、この“度胸を発揮するポイント”は人間として幅が広くないとわかりません。そして、幅が広くないと今回の社長さんみたいな場面に遭遇することもありません。
まとめ
“器=幅+度胸”
器をこの2つに分けて考えると、器を大きくすることを意図的に行うことは可能です。幅の広げ方は上述したとおりで、思い込みに気付き経験を積むことで幅が広くなります。
度胸も同じで、努力でつけることは可能です。例えば自衛隊みたいな場所に入り、訓練でどんな山奥にも入っていったり、何があっても前に前に進むみたいな訓練を受けると、幅は広くなりませんが度胸が付くことがあります。あとは生まれ持った度胸の大きさもあります。
小さく生まれたら次は中くらいに、中くらいに生まれたら次は大に、大は巨大に、というように大きさのレベルがあります。スポーツで言うとセンスみたいなものです。しかし、あなたの努力と行動で度胸は必ず大きく出来ます。
最後に…… 治療院の経営者として、会社を大きくするためには器が大きくならないといけませんが、その前に大事なことはあなたがどんな人間になりたいかです。ダークサイドで幅だけが広い人間になりたいのか、度胸を持ち器の広い人の人生を変えられる人間になりたいのか、そこが決まらないまま器が大きくなることはありません。本当はあなたは何がしたいんですか?